大辻清司の創作活動の初期にあたる1950年代の知られざる4つの作品を特集。いずれも複数枚で構成する写真作品として発表されました。
①《太陽の知らなかった時》
1952年8月、瀧口修造が企画と人選を担当する東京・神田のタケミヤ画廊での、小川義良との「写真二人展」にて発表した10点組の作品
②《海のギャラリー》、《砂上のあしあと》
『美術手帖』1956年8月号の特集「海と造形」で発表した作品(《海のギャラリー》は瀧口修造の文・構成による)
③《無言歌》
1956年12月、東京・銀座の小西六ギャラリーで開催されたグラフィック集団の第4回展「フォトグラフィック・コンクレート」にて発表
④《無罪・有罪》
吉岡実の詩、大森忠行の構成、大辻の写真により『現代詩』1959年3月号に掲載された10点組の作品
これらの作品はいずれも発表当初のプリントは現存しておらず、また初出時の詳細はわかっていません。このような背景によりこれまで十分な検証がなされていませんでした。そこで、発表当時の記録(展示会場写真、展評、掲載誌など)と現存するフィルム原板との比較検討をおこなったところ、発表作の多くで画面のトリミングが施されていることが判明しました。本巻のハイライト頁では、複写採録したフィルム原板の画像の上にトリミング位置の矩形を示すことで、初出時の作家の意図を視覚化し、その本質に迫ります。
(大日方欣一「シークエンスの新たな語法を求めて:『実験工房』期の大辻作品」を収録)