1969年2月に国立代々木競技場第二体育館で開催された「クロス・トーク/インターメディア」は、アーティストとエンジニアの協働、アートとテクノロジーの結合を目指した、わが国初めての大規模なインターメディアの祭典です。このイベントの成功は、翌年に開催される日本万国博覧会へのひとつの試金石として、人々の期待や関心を高めることにもつながります。会場でのリハーサルに立ち会った大辻清司の撮影フィルムには、イベントの生成過程やアーティストらの演奏風景、組みあげられた最先端電子機器の数々が記録されており、イベントの子細を知るうえで貴重なドキュメントといえます。また、未知の視聴覚体験を実現するべく試行錯誤するアーティストやエンジニアの表情、シークエンスで捉えられた実況シーンのダイナミズムなど、大辻ならではの優れた写真表現としても評価できる映像です。
(大日方欣一「インターメディア・リハーサル:大辻清司の10本」、川崎弘二「演奏会シリーズ『クロス・トーク』のインターメディア」、村井威史編「『クロス・トーク/インターメディア』プログラム」を収録)