わが国を代表する前衛美術グループである具体美術協会(具体)。吉原治良を指導者とし、関西を拠点に活動していた具体にとって1956年は、東京での展覧会や吉原によるマニュフェスト「具体美術宣言」(『芸術新潮』1956年12月号掲載)等により注目が高まっていた時期です。そして翌57年には、フランスの美術評論家ミシェル・タピエとの交流を通じてアンフォルメル的な表現へと向かっていきます。大躍進となるこの二年間の東京における活動を、大辻清司は三度撮影しています(第2回具体美術展、「舞台を使用する具体美術」東京公演、第4回具体美術展)。大辻が記録した映像には彼らが抱く活動理念を見出すことができます。本巻は、具体初期のリアルな姿を再提示することにより、具体の表現と理念が正しく検証されることを期待するものです。
(大日方欣一「大辻清司の『具体』ドキュメント」を収録)